認知症になる前と後で何が変わる?成年後見制度を使うべきタイミング
成年後見制度とは?
成年後見制度の目的
成年後見制度は、認知症などで判断能力が十分でなくなった方の財産や生活を、法律的に守るための仕組みです。本人の口座から生活費や医療費を支払ったり、不動産の売却手続き、施設入所の契約などを、家庭裁判所が選んだ後見人がサポートします。制度には、判断能力が低下してから利用する法定後見と、元気なうちに将来へ備える任意後見があり、どちらを選ぶかには成年後見タイミングの見極めがとても重要です。
法定後見と任意後見の違い
法定後見は、すでに判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所が後見人を選ぶ制度です。障害や認知症の程度に応じて「補助・保佐・後見」の3類型があり、できる支援の範囲が異なります。一方、任意後見は、本人に判断能力がある段階で「誰に何を任せるか」を公正証書で契約し、将来の備えをしておく仕組みです。成年後見タイミングを考える際、この二つの制度の違いを理解したうえで、相続や遺言、生前贈与などと合わせて検討することが欠かせません。
認知症と判断能力の変化
認知症になる「前」にできること
認知症の「前」、つまり日常生活に大きな支障がない段階では、できることが圧倒的に多く、成年後見タイミングとしても最も柔軟に選択できます。例えば、信頼できる家族や専門家を任意後見人に指定し、公正証書で任意後見契約を結ぶことができます。また、遺言を残して遺産分割の方針を示したり、生前贈与で一部の財産を移しておくことも可能です。これらの手続きは、本人に判断能力があることが前提のため、認知症発症後では難しくなることが多く、早めの成年後見タイミングの検討が将来の安心に直結します。
認知症が進行した「後」に起きるトラブル
認知症が進行し、日常の金銭管理や契約内容の理解が難しくなると、金融機関が口座の出金や解約を制限することがあります。その結果、生活費や介護費を家族が立て替え続ける事態になったり、高額な訪問販売や詐欺被害に遭っても契約の無効・取消しが複雑になることがあります。さらに、相続が発生した際に相続人の一人が認知症だと、遺産分割協議が進まず、相続税の申告期限への影響も出かねません。こうしたトラブルを避けるためにも、状況が悪化する前に成年後見タイミングを冷静に検討することが重要です。
成年後見タイミングの基本的な考え方
申立てを急ぐべきケース
成年後見の申立てを急ぐべきなのは、すでに生活に支障が出ているケースです。例えば、本人の年金や預貯金はあるのに、認知症が原因で銀行口座から出金できず、家族が生活費や医療費を負担している場合、成年後見タイミングを先送りにすると家計の負担が膨らみます。また、施設入所や自宅売却など、本人名義の契約行為が迫っている場合も、家庭裁判所の審理に数か月かかることを踏まえ、早めの申立てが必要です。「すぐ必要な契約があるかどうか」を軸に、急ぐべき成年後見タイミングかを判断しましょう。
様子を見ながら検討するケース
一方、日常生活は概ね自立しており、通帳の管理や簡単な買い物もできている場合、直ちに法定後見が必要とは限りません。この段階では、任意後見や家族信託など、より柔軟な選択肢も視野に入ります。成年後見タイミングを誤って早めすぎると、家庭裁判所の監督が長期間続き、手続きや報告の負担が増えることもあります。そのため、「今すぐ法定後見が必要か」「任意後見や遺言で準備しつつ様子を見るか」を、専門家への相談を通じて整理し、ご家族の希望とコストのバランスを取ることが大切です。
認知症になる前に検討したい任意後見・遺言・生前贈与
任意後見と公正証書遺言の組み合わせ
認知症になる前の成年後見タイミングで特におすすめなのが、任意後見契約と公正証書遺言をセットで準備する方法です。任意後見契約によって、認知症などで判断能力が低下した後の財産管理や介護、施設入所契約の方針を決めておきます。同時に、公正証書遺言で相続人ごとの遺産分割の方針を明確にしておけば、将来の相続トラブルを大幅に減らせます。これにより、生前は任意後見人が生活と財産を支え、死後は遺言に基づきスムーズに相続手続き・死後事務が進むという、一貫した安心設計が実現します。
生前贈与や家族信託との比較ポイント
生前贈与や家族信託は、相続税対策や財産の承継方法を柔軟に設計できる点で魅力があります。一方で、生前贈与は贈与税・相続税のルールを踏まえた慎重な設計が必要であり、家族信託は信託契約の内容を細かく決める手間と専門知識が求められます。成年後見タイミングを考える際には、「将来、判断能力が低下したときに誰がどこまで管理するか」という視点から、任意後見との役割分担を検討するとよいでしょう。
認知症になった後に使う法定後見と実務上の流れ
家庭裁判所への申立てから選任までの期間
認知症が進行してからの成年後見タイミングでは、法定後見の利用が中心になります。家庭裁判所への申立て後、医師の鑑定や調査官の面談などを経て、成年後見人が選任されるまで、平均で数か月程度かかるとされています。 そのため、「施設入所の契約を〇月までに済ませたい」「自宅の売却代金で介護費をまかないたい」といった具体的な予定がある場合、余裕をもった成年後見タイミングの設定が欠かせません。
成年後見人の仕事と財産目録・報告義務
成年後見人に選ばれると、本人の銀行口座や不動産などの財産を把握し、財産目録や収支予定表を作成して家庭裁判所へ報告する義務があります。就任後も、通常は年1回程度、財産の状況や生活状況をまとめた報告書を提出し、死後には相続人への引継ぎ内容を整理して終了報告を行います。成年後見タイミングを検討する際には、こうした長期的な事務負担や専門性も踏まえ、家族が後見人になるか、専門職へ依頼するかを話し合っておくことが大切です。
成年後見タイミングを逃すと起こりやすい相続・遺産分割トラブル
遺産分割協議が進まないケース
相続が発生したとき、相続人の一人がすでに認知症で判断能力が不十分な状態だと、そのままでは遺産分割協議に参加できません。この場合、その相続人について成年後見人を選任しなければ協議書に署名押印できず、不動産の名義変更や預貯金の解約が止まってしまうことがあります。結果として、相続税の申告や納税が遅れ、延滞税や加算税が発生するリスクも生じかねません。こうした事態を避けるためにも、親世代の健康状態や資産状況を踏まえた、早めの成年後見タイミングの検討が有効です。
死後事務や相続税申告への影響
葬儀費用の支払い、公共料金や施設利用料の精算など、亡くなった後の死後事務も、認知症の家族がいると複雑になりがちです。誰がどの口座から支払いを行うのか、死亡届や各種解約手続き、相続税の申告までを一貫して進めるには、事前の準備が欠かせません。任意後見や遺言、生前贈与とあわせて、死後事務委任契約を検討しておくことで、成年後見タイミングを含めた「生前から死後まで」の設計がスムーズになります。北日本相続センターでは、札幌・北海道全域対応で、こうした一連の流れを見据えた相続相談に応じています。
成年後見タイミングの相談をするには
北日本相続センターに相談するメリット
北日本相続センターは、札幌・北海道全域、石川県・富山県などの北陸エリア対応で、相続・遺言・成年後見・任意後見・死後事務など、高齢期の手続きを総合的にサポートしています。認知症の進行具合やご家族の状況、資産の内容に応じて、「今は任意後見で備えるべきか」「すぐに法定後見を申し立てるべきか」といった成年後見タイミングの判断材料を丁寧にご説明します。また、必要に応じて税理士や司法書士とも連携し、相続税や不動産の名義変更まで一体的に支援できる点も大きな強みです。
無料相談の活用と準備しておきたい情報
はじめて成年後見タイミングについて相談する際は、
- 本人の健康状態・認知症の診断状況
- 預貯金・不動産・保険などのおおよその財産内容
- 将来の住まい(自宅か施設か)に関する希望
- 相続人となる家族構成
などをメモしておくと、相談がスムーズです。北日本相続センターでは、初回は無料で相談を受け付けていますので、「まだ元気だけど将来が不安」「すでに認知症で困っている」どちらの段階でも、成年後見タイミングについて遠慮なくご相談ください。
まとめ
認知症になる前と後で、取れる選択肢や必要な手続きは大きく変わります。
「うちの家族は、いつどの制度を使うべきか?」と迷われたら、成年後見タイミングを一緒に整理してみませんか。
札幌・北海道全域、石川県・富山県などの北陸エリア対応の北日本相続センターでは、【初回無料相談】を実施しています。電話・オンラインのご相談も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、最終的な判断は、個別の事情を踏まえた専門家への相談により行ってください。
